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「土を育てる」工法とは?

 

鉄やコンクリートとは違って、土は育てることができる。刀鍛冶が鉄を鍛えて切れ味を良くするという例外的な状況を除けば、鉄やコンクリートは時の経過と共に劣化していく。ところが、土は土粒子の集合体であるため、土粒子間の隙間を狭めて固くし強くすることができる。このことは、一般には“圧密”現象と呼ばれてよく知られている。この土の持つ素晴らしい特性を、現場でなぜもっと積極的に活用して来なかったのであろうか。

人は“圧密”と聞くと、「圧密沈下が起こって沈下がなかなか収まらない厄介な現象である」とイメージするのではなかろうか。確かに、何か月も、時には何年もダラダラと長期にわたって続く大きな沈下は人間にとって非常に具合の悪い現象である。しかしながら、ここには「土を育てて強くすることが可能である」という大きなヒントが隠されている。土の粒子構造に着目すれば、子供を大人に成長させるように、土を育てることが可能である。具体的に言えば、例えばN値0の軟弱地盤を、N値が5とか10の地盤に、必要に応じて育てることができるのである。

昔から、圧密に関連した工法(例えば、松岡元著「土質力学」森北出版、p124参照)としては、緩速載荷工法(漸増荷重工法)、サンドドレーン工法、ペーパードレーン工法、プレローディング工法などがあり、「土を育てる」という概念がうかがえる。しかしながら、いずれの工法も比較的広い範囲に荷重をべったり載せるので、「一次元圧密」状態に近くなって、沈下量は大きくなり、沈下の収まる時間も長くかかる。これは、人間にとってあまり得策ではない。余分なところまで一様に圧密沈下させて強くするという、もったいない工法のように感じる。

一方、砕石の入った土のう、ソイルバッグ、D・BOXは、水だけを通して土粒子を通さない排水層にもなるので、その直下の軟弱地盤を局所的に圧密させる。この「局所的な圧密」は、上載荷重に合わせて土のう直下から必要な分だけ圧密させるので、沈下量も小さく、沈下の収まる時間も短くなるということが、現場実験と解析計算(広島大学山本春行による)によって分かっている(特に、即時沈下後の沈下の収まる時間が極めて短いのは注目に値する)。土のうやD・BOXの直下に何も入れなくても、いわば勝手に上載荷重に合わせて自然に地盤が強くなっていくというのは面白い(ただし、子供にいきなり大きな荷物を担がせられないように、現在の荷重と同じ程度の荷重増分にとどめないと地盤が破壊する可能性があるので注意を要する! 状況によっては現場で沈下計測をすべきである)。
 
今は、地盤改良といえば「セメント改良」を意味する時代であるが、セメント改良では、たとえ固まったとしても水を通しにくくするので、時として致命的である。土の事故はほとんど全てが水がらみで起こっている。いかに水を制するかがキーポイントである。これからは、上述の「土を育てる」工法が、究極の地盤改良工法になると思われる。この地球に優しい「土を育てる」工法を用いない手はない!

 

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最新の土の構成式から、自然にやさしい地盤の補強法=「土のう」の再評価まで。

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ジオシンセティックス論文集投稿 2010年12月4日

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