著書「D・Box工法の設計・施工の基礎」

著書紹介「D・Box工法の設計・施工の基礎」
「D・Box工法の設計・施工の基礎 ~地盤育成強化と液状化・振動・地震動低減~」(森北出版)

タイトル:「D・Box工法の設計・施工の基礎~地盤育成強化と液状化・振動・地震動低減~」

出版年:2020年10月

著者:松岡 元/山本春行/野本 太

ISBN-10 ‏ : ‎ 4627486014
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4627486010

出版社:森北出版株式会社

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目次

本書のご紹介

地盤改良工法のひとつとして、昔ながらの土のう工法を改良して開発されたD・Box工法があります。

これは、D・Boxとよばれる砕石入りの袋体を軟弱地盤のうえに設置することで局所的な圧密作用をもたらし、地盤を強化する工法です。

地盤を強化する作用だけでなく、液状化対策・交通振動対策・地震対策・凍上対策としての効果も期待できることから、今後よりいっそう普及することが期待されています。

本書では、これらのD・Box工法の効果の解説から、設計・施工の手順、実際の施工例までをくわしく説明します。

  • 液状化・地盤振動のリスクを軽減できる地盤改良法を探している方
  • 重機も入れないような狭い場所の軟弱地盤対策に困っている方
  • 低コストで環境負荷の少ない工法を探している方

などにはぜひ手にとっていただきたい1冊です。

概要

この本の元々考えていたタイトルは、「未来への提言ー土を育てる」というものでした。

私たちの地球の表面を覆っている土は、本質的に土粒子(固体)、水(液体)、空気(気体)からなる 3 相混合体です。

  • 土粒子(固体)
  • 水(液体)
  • 空気(気体)

全く異なる物質から成り立つ多相混合体は,人間にとって取り扱いにくい厄介な代物ですが、自然物であることもあって“夢のある材料”であると思われます。

上記の土の構成に着目すれば,次のことに気付きます。鉄やコンクリートとは違って、土は “ 育てる ” ことができます。

すなわち、子どもを大人に “ 育てる ” ように、土粒子の間の隙間(そこには水や空気がある)を狭めて固くし強くすることができます。

このとき,あまり急激に大きな力をかけて,土を破壊させないように注意しなければなりません。

子どもに,いきなり重いリュックサックを担がせられないのと同じです。

これらのことは、昔から“圧縮”あるいは“圧密”現象としてよく知られています。

このような土のもつ素晴らしい特性を、人間はなぜもっと積極的に活用してこなかったのでしょうか。

“圧密”と聞くと,沈下が収まらない厄介な現象とイメージする人が多いからかもしれません。

地盤は “ 育成強化 ” できる

本編で詳しく述べていますが、ある載荷幅の “ 局所的な圧密 ” をさせるように段階的に載荷していくと,元の地盤の支持力の 3 倍程度まで,短時間に “ 育成強化 ” できることが解析され、模型実験でも確かめられました。

その“育成強化”された領域の内側に、載荷幅を狭くして、さらに“局所的な圧密”をさせるように段階的に載荷しますと、たとえば元の地盤の支持力の 8 倍以上まで、短時間に “ 育成強化 ” できることも解析されるとともに、模型実験でも検証されました。

いまでこそ,このような計算や実験ができるようになりましたが、ソイルバッグ工法( D ・ Box 工法)は,それ以前から多くの田んぼや沼地のような軟弱地盤でこのことを実践して来ました。

理論計算や模型実験は、いわば後付けをしているのです。

具体的にイメージしやすいように言いますと、たとえば N 値が 1 の軟弱地盤を N 値が 3 とか 4 の地盤に、必要に応じて “ 育てる ” ことができるのです。

これからは、 N 値= 1 の地盤は、未来永劫に N 値= 1であると考える必要はないのです。

以上より、地盤は “ 育成強化 ” できるのです。

“ 育つ ” ものを育てないで用いるのは道理にかなわないので、土を育てること、すなわち地盤を育成強化することを、“ 未来への提言 ” として,本書を通して提案しています。

ソイルバッグ( D ・ Box を含む)の特性

 次に、すでに明らかになっていることも含めて、ソイルバッグ( D ・ Box を含む)の特性についてまとめてみます。

① 粒子間の摩擦で保持する土に対するもっとも有効かつ究極の補強法は、「土を完全に包み込み拘束すること」です(粒状体の区画拘束原理)。

ソイルバッグ( D ・Box )はその典型的な適用例です。

ソイルバッグ自体が驚異的な耐力を発揮する力学的なメカニズムが解明され,耐圧力の 2 次元および 3 次元の表示式が誘導されました(付録 1 参照)。

包み込み拘束するだけで、接着剤(セメント)を入れなくても、土粒子間の摩擦力を増やして確実に粘着力 C を付けることができるのです(ソイルバッグが強い本質的な理由はここにあります)。

ソイルバッグ 1 個が 20 ~ 40 tf の荷重(電車の車両 1 ~ 2 台分)に耐えることができるのです。

③ 砕石入りのソイルバッグは、袋の編み目がフィルターのように働いて、水はよく通すが土粒子は通しません。

この結果、水浸ヘドロ状態の軟弱な粘性土地盤であっても、ソイルバッグによって水(水圧)をよく吸収し、ソイルバッグ直下から圧力球根状に局所的に圧密させて直下の地盤をすみやかに育成強化し、地盤の支持力を増大させて沈下量を減少させることができます(ソイルバッグによる局所圧密・強化作用)。

また、水をよく通して水圧を抜き、土粒子は通さないので、液状化対策にもなります。

④ ソイルバッグはわずかなしなやかさを有するので、交通振動や地震動のエネルギーを、目にはみえない微小な袋の伸縮によって、中詰め土の粒子間やソイルバッグ間の摩擦熱エネルギーとして消散させます。

⑤ 砕石を入れたソイルバッグは、凍上防止効果もあります。

ソイルバックの中詰め材の砕石粒子が大きいということは、粒子間の隙間も大きいので水が毛管上昇しません。

したがって、水の補給がないので凍上しません。

 以上述べたように、一つの工法が五つの効果軟弱地盤対策・液状化対策・交通振動対策・地震対策・凍上対策としての効果─をもたらすソイルバッグ工法( D ・ Box工法)のコストパフォーマンスの高さは注目に値します。

まさに “ 一石五鳥 ” の工法です。

  • 軟弱地盤対策
  • 液状化対策
  • 交通振動対策
  • 地震対策
  • 凍上対策

なお、注意すべき点としては、ソイルバッグ( D ・ Box )の袋を日光(紫外線)にさらさないようにすることです。

紫外線防止剤は入っていますが時間の経過とともに袋の劣化は進みます。

土中に埋設すれば、袋の材質がポリエチレン、ポリプロピレンであるので、半永久的にもちます。

あとがき

 心静かに振り返ってみますと、 1990 年代初めに“ソイルバッグ工法”の研究を始めてから今日まで、この工法を特に軟弱地盤対策としてとか、液状化対策、振動対策、地震対策として開発してきたという思いはほとんどありませんでした。

この工法は、ただ土の特性の原理・原則を追いかけていくうちに、何かに導かれるようにして上記の多くの効果があることが分かって来て今日に至っています。

何だか大変“幸運”な工法であることに、いまさらながら気付いた次第です。

本書の【目次】

第1編 理論・解析編─ものの考え方

第1章 軟弱地盤の育成強化効果

  1. “ 土を育てる”とは 
  2. 局所圧密・強化作用の解析
  3. 局所圧密・強化作用の現場実験
  4. 局所圧密・強化作用による道路建設事例
  5. 局所圧密作用による粘着力の増加と支持力増大効果の解析

第2章 液状化の低減効果

  1. 液状化現象の発生メカニズムと一般的な液状化対策
  2. 透水性と不透水性ソイルバッグの液状化比較実験
  3. 茨城県K市道路建設におけるD・Boxによる液状化対策

第3章 交通振動の低減効果

  1. はじめに
  2. ソイルバッグによる振動低減特性
    1. ソイルバッグ積層体の鉛直方向の振動低減特性
    2. ソイルバッグ積層体の鉛直振動の水平方向への伝播特性
    3. ソイルバッグ積層体の繰り返しせん断特性と等価減衰定数
  3. ソイルバッグによる振動対策工事の事例
    1. 道路交通振動の対策工事例
    2. 鉄道振動の対策工事例
    3. 建物振動の対策工事例
  4. D・Boxによる振動低減特性
    1. D・Boxの概要
    2. D・Boxによる振動低減特性
    3. D・Box工法による道路交通振動の対策工事例1
    4. D・Box工法による道路交通振動の対策工事例2
  5. まとめ

第4章 地震動の低減効果

  1. はじめに
  2. 東日本大震災時の保育園の事例(宮城県T市)
  3. 地震後の墓石の倒壊状況の事例(福島県)
  4. 住宅の地盤補強と地震動低減工事例(茨城県Y市)
  5. まとめ

第2編 施工編─施工上の基本事項と工事例

第5章 D・Box の施工上の基本事項

  1. はじめに
  2. 現場状況の把握に関する基本事項
    1. 現場視察
    2. 地盤調査
  3. D・Box の製作における基本事項
    1. 中詰め材の選定
    2. 投入容量の管理
    3. D・Box の製作要領の詳細
  4. D・Box の敷設における基本事項
    1. 吊上げ時の安全確保
    2. 敷設時の寸法管理
    3. 軟弱な粘性地盤や砂質地盤における敷設上の注意点
    4. そのほかの施工上の注意点
  5. D・Boxの転圧における基本事項
    1. D・Boxにおける転圧の意味(あるいは目的)
    2. 軟弱な粘性地盤における転圧上の注意点
    3. 含水比の高い砂質地盤での転圧上の注意点
    4. 原地盤の支持力とD・Box敷設後の平板載荷試験による支持力の比較

第6章 D・Box工法の施工マニュアル

  1. 施工計画
  2. 施工
    1. 施工着手前の準備
    2. D・Boxの施工
    3. D・Boxの施工状況の詳細
  3. 工程管理
  4. 品質管理
  5. 作業管理
  6. 安全衛生管理
  7. 工事記録

第7章 D・Box工法の工事例

  1. 軟弱地盤の育成強化効果の工事例
    1. 施工状況
    2. 解説
  2. 超軟弱地盤の工事例
    1. 工事例1:埼玉県での沼地に建設された道路ほかの地盤補強
    2. 工事例2:滋賀県でのクレーン搬入のための仮設道の地盤補強
  3. 液状化の低減効果の工事例:愛知県でのL型擁壁下の地盤補強
    1. 施工状況
    2. 解説
  4. 交通振動の低減効果の工事例
    1. 施工状況
    2. 解説
  • 付録1 各種形状の袋体の耐圧力の評価方法とD・Boxの耐圧力の算定
  • 付録2 模型実験による地盤の育成強化効果の検証
  • 付録3 局所圧密強化効果を評価した簡易設計法の2試案
  • 付録4 ソイルバッグを用いたモンゴルでの支援事業

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