1)従来の地盤改良工法
従来の地盤改良工法は、大きく3種類に分けることができます。
- 地表面付近の軟弱地盤全体をセメント系固化材で固める(表層改良工法)
- セメント系固化材を使用した杭状補強体で建物を支える(柱状改良工法)
- 鋼管杭によって建物を支える(鋼管杭工法)
上記の3工法うち、上の2工法がセメント系地盤改良工法です。
従来の地盤改良工法のデメリット
従来の地盤改良工法に用いるセメントや鋼管は埋設物にあたるため、不動産売買時のマイナス要因と見なされます。
また、地盤改良にセメントおよびセメント系固化材を使用した場合、六価クロムが発生し、土壌汚染を招く可能性があります。
さらに、埋設物の撤去にかかる費用は、施工費用のおよそ3倍です。
2)セメント系地盤改良のメカニズム
セメント系地盤改良のメカニズムは、セメントと水が反応してできる「水和生成物」が土粒子を化学的・物理的に固め、地盤を硬化させる仕組みです。
具体的には、セメントが水と反応して生成するカルシウム・シリケート・ハイドレートなどが、土粒子間の隙間を埋めて結合を強め(水和反応)、さらにセメントのアルカリ性で土中の成分と反応する「ポゾラン反応」も起こり、地盤の強度を高めて沈下を防ぐというものです。
3)土のう(ソイルバッグ)工法の持つ3つの不思議と5つの効果
次に、土のう(ソイルバッグ)の持つ頼りになる特性について見てみましょう。
- 土のう自体の驚異的な耐荷力
- 土のう袋の編み目のフィルター効果
- 土のう積層体の振動低減特性
不思議その1:土のう自体の驚異的な耐荷力

まず、砂や礫や砕石をペラペラの市販の土のう袋で包んだだけの土のう自体が、20トン以上の荷重に耐える(コンクリートなみの耐荷力を持つ)ことが実験によって検証されました。
そして、その耐荷力の算定式も導くことができました。

すなわち、土のう自体が持つ人間の想像をはるかに超える驚異的な耐荷力について、実験からも理論からも証明されました。
言い換えると、土のう自体が コンクリートなみの耐荷力を持つことは確かなのです。
不思議その2:土のう袋の編み目のフィルター効果
次に、土のう袋の編み目が、図らずも水は通すが土粒子は通さないというフィルター効果を持っていて、これが想像を超えた凄い作用をもたらします。
すなわち、土のうの下の軟弱地盤から自然に水だけを抜いて、下の軟弱地盤を局所的に圧密させることに気付きました。
このことは、土のう直下の軟弱地盤を土のう上部からの荷重の増加に伴って徐々に局所的に圧密強化できる、いわば、より丈夫に”育てる”ことができる、ことを意味します。
例えば、N値=1の地盤を徐々にN値=2とか3の地盤に”育てる”ことができるということです。
これは、画期的なことではないでしょうか。
ちなみに、セメント改良基礎やコンクリート基礎は水を通さないので、上部からの荷重によってセメント改良体の下の軟弱地盤の土粒子の間の間隙水圧が高まっても水の逃げ道がなく、有効応力を失って支持力が低下します。

また、水は通すが土粒子は通さないというフィルター効果は、地震時などに土砂が水と共に噴き上がってくる液状化現象を賢く抑える働きをします。
すなわち、水と共に噴き上がってくる土砂は土のう袋の編み目のフィルター効果で抑えて、水だけを土のう袋の中に吸収して水圧を下げることを自然に行ってくれます。
一番安価で確実な液状化対策となります。

土のう袋の中には水を通しやすい大きな粒子の砕石を入れることをお勧めします。
ちなみに、セメント改良基礎やコンクリート基礎は水を通さないので、噴き上がってくる土砂と水の圧力をまともに受けて傾いたり沈んだりします。
さらに、大きな粒子の砕石などを入れた土のうは、粒子の間の隙間も大きくて水が毛管上昇しないので、寒冷地の凍上現象を抑えることができます。
不思議その3:土のう積層体の振動低減特性
土のうを積層した基礎を施工した住宅や建物から、
今まで感じていたひどい交通振動を感じなくなった
とか、
東日本大震災の1ヶ月ほど前に土のう積層基礎で完成した保育園の避難所(2階部分、1階は保育園バスの駐車場で外周しか基礎はない)で、
厳しい地震の揺れや津波を免れて、園児全員を含む46人の命を救われた
とか、素晴らしい知らせが届きました。
それで、振動計測を土のう積層体を建物下に配置した場合や道路路盤に配置した場合などについて、数多く実施しました。
その結果、振動の低下、特に人間が感じやすい振動域での振動の低下が観察されました。
理由としては、
- 土のうの持つ”しなやかさ”(わずかな伸び縮みを許すこと)で、振動エネルギーを土のうの中の土粒子の間の摩擦熱エネルギーとして消散させること
- 個々の土のうを並べた土のう積層体の間には隙間があって、平面的にも立体的にも振動が伝わりにくいこと
などを考えています。

なお、土のうの良さは、それ自体が予想外に強くて、かつ水を通すことや”しなやかさ”を持っていることなので、セメント改良と併用すべきではありません。土のうの良さを殺してしまうことになるからです。
以上よりご理解いただけるように、土のう(ソイルバッグ)工法は、図らずも”一石五鳥”の効果を持つ工法であることが、徐々に分かってきました。
すなわち、
- 軟弱地盤対策としての効果
- 液状化対策としての効果
- 交通振動対策および機械振動対策としての効果
- 地震対策としての効果
- 凍上対策としての効果
上記のことより、土のう(ソイルバッグ)工法は、考案者自身が何かしら不思議な導きを感じる大変ラッキーな工法であることをご理解いただけたでしょうか。
本工法を基にして、開発されたD・Box工法は、実際の公共工事にも対応できるように発展させたものです。
D・Box*は、筆者が提唱した土のようなバラバラな粒状体の最も有効な補強法は”完全に包み込んで区画し拘束することである”という「区画拘束原理」を土のう(ソイルバッグ)以上に生かしたものとなっており、D・Box工法のさらなる進展が期待されます。*メトリー技術研究所(株)登録商標

