土のう、ソイルバッグ、D・Box。
それぞれ規格は違えど、つまりは「土のう」の一種と言えます。
土のうを、強度などを改良し特別に開発していってできたのが「ソイルバッグ」、「D・Box」。
どんどん高規格なものになっていきました。
それで、基本となる土のうを元に、土のうがなぜ地盤を強化できるのかという点を説明します。
また、その他の効果や、使用状況なども後述します。
『土のう』の強さの秘密
1. 土のう袋に砂や砕石などを入れます。

2. 上から圧力がかかると、土のうは平らになります。

3. 土のうが平らになると、袋の周囲の長さが延び、袋に張力が発生します。

4. 袋に張力が発生すると、袋の中の土粒子間の力が増加し、摩擦力も大きくなります。

5. 土粒子間の大きな摩擦力によって土のう全体が拘束強化し、コンクリート並みの強度を発揮するようになります。

【適用例】
- 住宅基礎地盤の補強
- 擁壁の裏込め材料
- 各種公共事業
- 補強土壁、擁壁などの基礎
- 道路改修工事
- 災害復旧工事
→事例についてはこちら
■円形袋体の圧縮強度の評価方法

昔から用いられている「きんちゃく」からもわかるように、円形袋体は袋体がつり上げられたときに生じる、力学的に安定した自然な形であり、中詰め材に対して一様で極めて効果的な拘束効果を与えるものです。
このような袋による拘束力により、中詰め材は驚異的な圧縮強度を発揮するようになります。
そこで、ここでは円形袋体の圧縮強度の表示式を提示するとともに、砕石入りの円形網状袋体の圧縮試験結果と比較して十分な予測能力を持つことを検証します。
これによって、「円形土のう」のような円形袋詰め補強土の圧縮強度を評価し、その性能表示をすることが可能となります。
詳しくはこちらの「円形袋体の圧縮強度の評価方法」という記事をご覧ください。
■土のうによる「局所圧密・強化作用」(沼地実験)









論文「土のうによる超軟弱地盤の「局所圧密・強化」工法」はこちらよりご覧いただけます。

ソイルバッグとは?

洪水などの災害時に活躍する『土のう』。
最近の研究で、使い方次第ではセメント並みの強度を持つなど、これまでに知られていなかった長所が明らかになってきました。
圧力に強い『土のう』の性質を発見したのは、名古屋工業大学の研究者たちです。
地盤工学が専門の松岡元(はじめ)教授のもと、土の粒子の研究に取り組み、『土のう』が持つ強さに気づきました。
国内での使用

左はM県のマンション建設現場における作業風景です。
通常は基礎を固めるためにセメントが用いられますが、この現場では『高規格土のう』が使われました。
『土のう』は圧力がかかると固まるということが研究で明らかになり、品質についても信頼性の高さが実証されています。
現場責任者は、土との相性が影響しやすいセメント系の固化剤と比べ、「間違いなく結果が出る、目的の品質が得られる」工法であると語っています。
土のうの耐圧性

『土のう』の上から圧力をかけると、袋の内側に向けて力が働き、中の粒子が密着します。
その結果、大きな摩擦力が生じ、まるでコンクリートのように固まるのです。
固まった粒子は外には拡散しないので、よほど大きな力が掛からない限り、袋は破れません。

機械で実際に圧力をかけ、『土のう』の耐久力を実験してみます。
右は、直径10センチのコンクリートです。上から同じ強さの圧力をかけています。
圧力がおよそ20トンに達したところで、コンクリートには亀裂が生じていますが、『土のう』には変化がありません。
この実験では、37トンまで耐えることができました。
土のうの振動低減効果

また、『土のう』には振動を吸収・遮断する効果が確認されています。
『土のう』に鉛直荷重を加えた状態で繰り返し水平力を作用させた結果、振動がすぐに減衰されることが分かりました。
ソイルバッグによる基礎補強は、このように高減衰構造体となるため、振動対策や地震対策として高く評価されています。
こうした効果はすでに名古屋市内の幹線道路で活用されています。
海外でも使用

『土のう』にはどんな材質の土も入れることができるため、どこでも簡単に作り、工事に利用することが出来ます。
東ティモールでの道路復旧工事や、ケニヤの道路建設などにも『高規格土のう』ソイルバッグが使われてきました。
コンクリートなどの物資が不足した場所でも有効な資材だと注目されています。
「ケニアの大地に命への道 by 土のう(ソイルバッグ)」についてはこちらをご参照ください。
まとめ

古くから身近にありながら、研究によって本格的な建築に利用されるようになった『土のう』が秘めた可能性は、まだまだあります。
当研究会は、今後もこの『高規格土のう工法・ソイルバッグ』の研究と開発を続け、このすばらしい技術を通して社会に貢献していきたいと考えています。
関連記事
「D・Box工法の設計・施工の基礎」についてはこちらをご覧ください。
「「土を育てる」工法(D・Box工法)とは?」はこちらをご覧ください。
「現代版土のう「D・Box」の概要や種類」についてはこちらをご参照ください。