『土のう』自体の強さの秘密
1. 土のう袋に砂や砕石などを入れます。

2. 上から圧力がかかると、土のうは平らになります。

3. 土のうが平らになると、袋の周囲の長さが延び、袋に張力が発生します。

4. 袋に張力が発生すると、袋の中の土粒子間の力が増加し、摩擦力も大きくなります。

5. 土粒子間の大きな摩擦力によって土のう全体が拘束強化し、コンクリート並みの強度を発揮するようになります。

土のうの耐圧性

『土のう』の上から圧力をかけると、袋の内側に向けて力が働き、中の粒子が密着します。
その結果、大きな摩擦力が生じ、まるでコンクリートのように固まるのです。
固まった粒子は外には拡散しないので、よほど大きな力が掛からない限り、袋は破れません。

機械で実際に圧力をかけ、『土のう』の耐久力を実験してみます。
右は、直径10センチのコンクリートです。上から同じ強さの圧力をかけています。
圧力がおよそ20トンに達したところで、コンクリートには亀裂が生じていますが、『土のう』には変化がありません。
この実験では、37トンまで耐えることができました。
各種形状の袋体の耐圧力の評価方法とD・Boxの耐圧力の算定
「D・Box工法の設計・施工の基礎 ~地盤育成強化と液状化・振動・地震動低減~」(森北出版) の「付録1」より
3次元直方体形袋体の圧縮強度の評価式
付図1.1に示すように、直方体形袋体モデル(幅B、奥行きL、高さH)のz軸方向に最大主応力σ1f, x軸方向に中間主応力のσ2f, y軸方向に最小主応力σ3f を作用させて、直方体形袋体が破壊するときの条件式を立てる。
袋体の破壊時には、直方体形袋体のすべての面に同じ単位幅あたりの破断張力Tが作用するものとする。

このとき、z軸方向の力のつり合いより次式を得る。

なお、上式において係数2がつく理由は、長方形の面(B×L)のそれぞれ両端において張力で引っ張られるからである。
式(A1.1)より、

となる。
これらのσ1,とσ3 の作用下で中詰め材(φ材料)が破壊するものとすると、破壊条件式(A1.3)が成立する。

ここに、Kp=(1+sinφ)/(1-sinφ)(φ:内部摩擦角)である。
式(A1.3)に式(A1.2)を代入して整理すれば、直方体形袋体の圧縮強度(耐圧力)の表示式として次式を得る。

上式をみて興味深いのは、式(A1.4)の形がいわゆる粘着力Cを有する摩擦性材料(C,φ材料)の破壊条件式(A1.5)と同じ形をしていることである。

これより、式(A1.4)の右辺第2,第3項と式(A1.5)の右辺第2項を対応するものとして等値すると、粘着力Cにあたるものが次式で求められる。

上式より、袋で包み込んで拘束するだけで(張力Tをはたらかせることによって),粘着力Cが得られることがわかる。
このことは、土粒子どうしが張力Tによって押さえつけられると、摩擦力がはたらいて土粒子どうしがずれにくくなる(土粒子間に接着剤を入れたのと同じ)ことを思えば理解される。
3次元円柱形袋体の圧縮強度の評価式

付図1.2に示すように、円柱形袋体モデル(直径D,高さH)のz軸方向に最大主応力のσ1f , 外周に最小主応力σ3fを作用させて、円柱形袋体が破壊するときの条件式を立てる。
z軸方向,ならびに水平面内の力のつり合いより次式を得る。


破壊条件式(A1.3)に代入して整理すれば、次式を得る。

なお、上式と同じ式の形は、式(A1.4)においてB=L=Dとおいても得られる。
式(A1.5) と比較すれば、次式を得る。

2次元長方形袋体の圧縮強度の評価式
2次長方形袋体(幅B、高さH)の場合には、式(A1.4)においてL→∞とすればよいので、次式を得る。

式(A1.5) と比較すれば、次式を得る。

D・Box-LS100とLS150の耐圧力および耐荷重の算定
ここで、上記の式(A1.4)を用いてD・Box-LS100とLS150の圧縮強度(耐圧力)と耐荷重を算定してみよう。
D・Box-LSの袋の材質はポリプロピレン(紫外線防止剤入り)であり、その試料幅5cmの引張強度は縦方向,横方向共に 1.93kN/5cmであることが試験結果よりわかっている。
したがって、袋の破断張力はT=38.6kN/mとなる。中詰め材の砕石の内部摩擦角はφ=42°~44°として、平均値のφ=43°を用いることにする。
このとき、Kp=(1+sinφ)/(1-sinφ)=5.289となる。そして、 σ3f=0(大気圧)とする。
D・Box-LS100 (B=L=1m,H=0.25m)の場合
- 耐圧力:σ1f=1,887kN/m2≒1,900kN/m2
- 耐荷重:1,900×1×1=1,900kN
D・Box-LS150(B=L=1.5m, H=0.45m)の場合
- 耐圧力:σ1f=1,077kN/m2≒1,100kN/m2
- 耐荷重:1,077×1.5×1.5=2,423kN≒2,400kN
なお、以上の計算にはトラスバンド(内部拘束バンド)の効果は考慮していない。
D・Box-LS150を1,000tfまで載荷可能な試験機で試験したところ、1,000tfまで載荷しても破壊させることはできなかった。
実際には、内部拘束バンドの効果もあって、上記の計算結果である 2,423 kN/9.8=約250tfよりも相当大きな耐荷重があるようである(1tf=9.8kN)。
なお、参考までに、ほかの種類のD・Boxについての式(A1.4)による結果を示すと、
- D・Box-SS45の耐荷重:約340kN(耐圧力:約1,700kN/m2)
- D・Box-SS90の耐荷重:約1,300 kN(耐圧力:約1,600kN/m2)
となる。
上記の計算結果やこれまでの実験結果から、現場での通常の荷重によって袋自体が破断することはまずないと考えられる。
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「D・Box工法の設計・施工の基礎」についてはこちらをご覧ください。
「「土を育てる」工法(D・Box工法)とは?」はこちらをご覧ください。
「現代版土のう「D・Box」の概要や種類」についてはこちらをご参照ください。



