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PROFILE – 松岡 元(まつおかはじめ)プロフィール
ご挨拶
私は、若い頃には、土粒子1個1個がどのように動くかなど徹底した基礎研究に打ち込みました。物事の根源―本質―を見極めたかったからです。その中から、土質・地盤技術者がよく用いているモール・クーロンの破壊規準(粘着力cと内部摩擦角φで規定される)の3次元版に相当するSMP破壊規準(空間滑動面―SMP―に基づいた土質材料の破壊規準)を発見できたのは幸いでした。このSMP規準は、金属材料に対するトレスカ規準、ミーゼス規準とも明快に位置付けられ、その美しくシンプルな形もあって世界的に高く評価されています。
50歳になろうかという時に、自分の研究を祈りの内に振り返る機会がありました。国民の税金で好きなことをやらせていただいて来たのだから、最後の10年位は少し役に立つことも考えなくてはと思い始めました。そして、土質力学(Soil Mechanics)の応用部分である土圧問題、支持力問題、斜面の安定問題を対象とした模型実験を行ないました。その中から、先人の知恵「土のう」を力学的に解明し、従来は仮設資材であったものを本設資材として積極的に活用する高規格土のう工法「ソイルバッグ(Soilbag)」を開発できたことは大きな喜びです。ソイルバッグを用いた工法は、支持力増大・沈下抑制効果(土のう直下の軟弱地盤の局所圧密・強化も促す)だけでなく、振動低減効果、地震動減衰効果、凍上防止効果もあり、まさに一石“多”鳥と言えます。
本工法は現時点で海外も含め2,000件以上の施工実績を持っています。今後、日本国内はもとより、開発途上国を含め世界中で普及するよう、できる限りの努力を傾けていきたいと考えております。皆様のいっそうのご協力とご支援をお願い申しあげます。
松岡 元
学歴
1966年 3月 | 京都大学工学部土木工学科卒業 |
1968年 3月 | 京都大学大学院工学研究科土木工学専攻修士課程終了 |
1971年 3月 | 京都大学大学院工学研究科土木工学専攻博士課程単位取得 |
学位
1974年 1月 | 工学博士(京都大学)”DEFORMATION CHARACTERISTICS OF SOIL” |
職歴
1971年 4月 | 京都大学防災研究所助手 |
1973年 4月 | 京都大学防災研究所助教授 |
1976年 4月 | 名古屋工業大学工学部助教授 |
1976年 9月 | ノルウェー国ノルウェー地盤工学研究所へ海外研修(1977年10月まで) |
1986年 1月 | 文部省長期在外研究員としてオーストラリア国シドニー大学および 英国オックスフォード大学へ出張(1986年11月まで) |
1987年10月 | 名古屋工業大学工学部教授 |
2006年 4月 | 名古屋工業大学名誉教授(現在に至る) |
所属学会
地盤工学会 土木学会 建築学会 |
著書
受賞
1975年 | 地盤工学会奨励賞 |
1987年 | 地盤工学会論文賞 |
1999年 | 地盤工学会功労賞 |
2004年 | 土木学会技術開発賞(原位置せん断試験法)、簡明技術賞(PORT賞) |
2005年 | 土木学会技術開発賞(高規格土のう工法「ソイルバッグ」) |
社会的活動
1973年 | 地盤工学会関西支部幹事 |
1976年 | 地盤工学会中部支部幹事 |
1980年 | 地盤工学会論文報告編集委員会委員 |
1986年 | 土木学会中部支部幹事 |
1990年 | 地盤工学会理事 |
1992年 | 地盤工学会中部副支部長 |
1994年 | 地盤工学会中部支部長 |
1996年 | 土木学会中部支部商議員 |
2004年 | 土木学会表彰委員 |
D・BOX工法には、障害者施設を支援するシステムが組み込まれています。具体的には、D・BOXにガイドゲージと呼ばれるプラスチック製の枠をはめこむ作業を障害者施設にお願いし、通常の手間賃の数10倍の費用をお支払いして障害者の自活を支援するものです。結果として、国や県は障害者施設への補助金を節約できますから、その分を道路や他の土木・建築経費に回すこともでき、建設分野の活性化にもつながります。これは、新たな取り組みとして注目され、すでに機能しています。例えば、本工法で道路を1km建設すれば、5~10人/年の障害者が自活できて、自尊心を保ちつつ生活できるというものです。そのためには、本工法が他に追随を許さない抜群の技術であることが基本となります。埼玉県、山梨県、愛知県の一部ですでに使われています。
資本主義社会では利潤追求が第一ですが、利益の一部を初めから社会-できれば様々な意味で支援の必要な“弱い社会”-に還元することを組み込んだシステムを構築し、利益の均等化、「均等をはかる」精神を実現する方法の一つになっています。このような相互扶助精神に基づく利益の均等化システムの構築は、さまざまな分野で応用が可能と思われます。