
松岡 元よりご挨拶
私、松岡 元は、若い頃には、土粒子1個1個がどのように動くかなど徹底した基礎研究に打ち込みました。
なぜなら、物事の本質―現象の根源―を見極めたかったからです。
SMP(松岡・中井)破壊規準を発見
その中から、土質・地盤技術者がよく用いているモール・クーロン破壊規準(粘着力cと内部摩擦角φで規定される)の3次元版に相当するSMP(松岡・中井)破壊規準(空間滑動面ーSMPーに基づいた土質材料の破壊規準)を発見できたのは幸いでした。
このSMP規準は、金属材料に対するトレスカ規準、ミーゼス規準とも明快に位置付けられます。
すなわち、
- 砂のようなバラバラの粒状材料の2次元版のモール・クーロン規準
- その3次元版のSMP(松岡・中井)規準
- 結晶構造で固く結ばれた金属材料の2次元版のトレスカ規準
- その3次元版のミーゼス規準
これら4規準の相互関係は数学的にも物理的にも極めて美しくシンプルで、他のものが入り込む余地は全くありません。
歴史に残る発見として、世界的に高く評価されています。

(ただし、土質材料は圧縮応力、金属材料は引張応力の違いがある。)
第1ステップ:
砂のような粒状材料の変形や破壊は、粒子間のスベリであり、摩擦法則(せん断応力τと垂直応力σの比τ/σ)に支配されます。
τ/σが最大の面は、モールの応力円に原点からの直線が接する点になるので、45°面より立った面になります。
土のスベリ面(破壊面)が{45°+φ/2}面(φ:破壊時の内部摩擦角)になることはよく知られています。
第2ステップ:
上の話は3次元応力下では、どのように考えれば良いのでしょうか。
土の要素に異なる3主応力が作用する場合には、すなわち最大主応力σ1と中間主応力σ2と最小主応力σ3(σ1>σ2>σ3)が作用する場合には、最大主応力σ1と最小主応力σ3の間の2次元的な滑動面(下図のAC面)だけでなく、最大主応力σ1と中間主応力σ2の間の2次元的な滑動面(下図のAB面)や中間主応力σ2と最小主応力σ3の間の2次元的な滑動面(下図のBC面)も想定してみました。
なお、滑動面とは、土粒子が滑り動く面のことであり、最終的にはスベリ面(破壊面)に至るものです。
私の博士論文(Deformation Characteristics of Soil:1973年8月、京都大学)では、この3個の2次元的滑動面(総称して複合滑動面ーCMP;Compositely Mobilized Planesーと名付けた)で生じるひずみの重ね合わせとして、3主応力下の応力ーひずみ関係を表現することに成功しました。
(松岡著:「地盤工学の新しいアプローチ」、京都大学学術出版会、2003年、pp.7-15参照)
第3ステップ:
下図(図1.1.6(a))の3個の2次元的滑動面AB、BC、ACを眺めていると、3次元的な面ABC(図1.1.6(b))が浮かび上がってきました。
これが空間滑動面(SMP;Spatially Mobilized Plane)です。
このSMP上のせん断応力τSMPと垂直応力σSMPの比τSMP/σSMP、せん断ひずみ、垂直ひずみで整理すると、同じ砂(同じ密度)の3軸圧縮試験( σ1>σ2=σ3)、3軸伸張試験(σ1=σ2>σ3)、3主応力試験(σ1>σ2>σ3)の結果が全て1本のカーブ上に乗った時には、躍り上がるほど喜びました。
当時、私の指導大学院生だった中井照夫氏の修士論文が完成した時でした。
このτSMP/σSMP=一定の時に砂のような粒状材料が破壊するというのが、SMP(松岡・中井)破壊規準です。
これは、よく使われているモール・クーロン規準の3次元版に当たっています。

第4ステップ:
何気なく、”金属の2次元の破壊規準:トレスカ規準(1868年)”と”3次元の破壊規準:ミーゼス規準(1913年)”を眺めていて、面白いことに気付きました。
結晶構造で繋がれている金属材料は引張応力の座標軸で表記されるのに対して、バラバラの粒子からなる粒状材料は圧縮応力の座標軸で表記されるという違いはありますが、破壊規準式の形、モールの応力円上の応力点、3次元応力下の破壊面の形に美しい対応が見られました。
両材料の根本的な相違は、金属材料が最大せん断応力τmaxによって破壊するのに対して、粒状材料は最大せん断応力・垂直応力比(τ/σ)maxによって破壊するということです。
”金属材料の2次元の破壊規準:トレスカ規準(1868年)”と”3次元の破壊規準:ミーゼス規準(1913年)”および ”粒状材料の2次元の破壊規準:モール(1882年)・クーロン(1773年)規準”と”3次元の破壊規準:松岡・中井(SMP)規準(1974年)”の美しい相互関係の具体的な内容については、上記の文献:「地盤工学の新しいアプローチ」、pp.22-29や松岡著:「土質力学」、森北出版(株)、1999年、pp.143-149 をご覧ください。
第5ステップ:
粒子間に結合力(ボンド)のない粒状体のような真の摩擦性材料(粘着力c=0、φ材料)と、結晶構造による強力な結合力を持つ金属のような真の粘着性材料(内部摩擦角φ=0、c材料)の両極端を抑えれば、全ての材料はそれらの中間に位置し、人間にとって扱いやすいことに気付きました。
それで、金属と粒状体の中間材料に対する破壊規準を考えました。
その詳細については、上記の文献:「地盤工学の新しいアプローチ」、pp.30-35 をご覧ください。
詳しくはこちらをご覧ください。

研究の方向性の転換
50歳になろうかという時に、自分の研究を祈りの内に振り返る機会がありました。
これまで、国民の税金で好きなことをやらせていただいてきたのだから、最後の10年位は少し役に立つことも考えなくてはと思い始めました。
そして、土質力学(Soil Mechanics)の応用部分である土圧問題、支持力問題、斜面の安定問題を対象とした模型実験を行ないました。
その中から、先人の知恵「土のう」を力学的に解明し、従来は仮設資材であったものを本設資材として積極的に活用する高規格土のう工法「ソイルバッグ(D・Box)工法」を開発できたことは大きな喜びです。
*なお、D・Boxは、松岡らが開発した土のう(ソイルバッグ)工法の理論・効果・工事実績と指導に基づいて、メトリー技術研究所(株)野本太社長が2006年から開発した製品です。これは、土のう(ソイルバッグ)の持つ地盤補強と液状化・振動・地震動低減などの多様な効果を実際の公共工事に対応できるように発展させたものです。
ソイルバッグ(D・Box)工法
ソイルバッグ(D・Box)を用いた工法は、
- 支持力増大・沈下抑制効果
- 土のう袋の編み目のフィルター効果により、土のう直下の軟弱地盤の局所圧密・育成強化を促す
- 液状化低減効果
- 土のう袋の編み目のフィルター効果により、水を抜いて水圧を下げ砂の流出を止める
- 交通振動・地震動低減効果
- 土のう積層体のバラバラでしなやかな特性により、交通振動や機械振動・地震動の低減を促す
- 凍上防止効果
- 土のう袋の中に粒の大きな砕石を入れることにより、水の毛管上昇を阻止する
といった効果があります。
このような一石”多”鳥の多くの効果を生み出す土のう(ソイルバッグ)工法は、人間の叡智を超えた素晴らしい工法です。
本工法は現時点で海外も含め5,000件以上の施工実績を持っています。
今後、日本国内はもとより、開発途上国を含め世界中で普及するよう、できる限りの努力を傾けていきたいと考えております。
皆様のいっそうのご協力とご支援をお願い申しあげます。


学歴
| 1966年 3月 | 京都大学工学部 土木工学科 卒業 |
| 1968年 3月 | 京都大学大学院 工学研究科 土木工学専攻 修士課程 終了 |
| 1971年 3月 | 京都大学大学院 工学研究科 土木工学専攻 博士課程 単位取得 |
学位
| 1974年 1月 | 工学博士(京都大学) ”DEFORMATION CHARACTERISTICS OF SOIL” |
職歴
| 1971年 4月 | 京都大学 防災研究所 助手 |
| 1973年 4月 | 京都大学 防災研究所 助教授 |
| 1976年 4月 | 名古屋工業大学 工学部 助教授 |
| 1976年 9月 | ノルウェー地盤工学研究所へ海外研修(1977年10月まで) |
| 1986年 1月 | 文部省長期在外研究員として、オーストラリア シドニー大学および 英国 オックスフォード大学へ出張(1986年11月まで) |
| 1987年10月 | 名古屋工業大学 工学部教授 |
| 2006年 4月 | 名古屋工業大学 名誉教授(現在に至る) |
所属学会
- 地盤工学会
- 土木学会(現在退会)
- 建築学会(現在退会)
著書一覧

「D・Box工法の設計・施工の基礎 ~地盤育成強化と液状化・振動・地震動低減~」
2020年10月 森北出版株式会社 (山本春行・野本 太と共著)

「The SMP Concept-based 3D Constitutive Models for Geomaterials」
2006年 Taylor & Francis(旧A. A. Balkema)社 (D. A. Sunと共著)

「A New Earth Reinforcement Method using Soilbags」
2006年 Taylor & Francis(旧A. A. Balkema)社 (S. H. Liuと共著)
論文一覧
*全論文百数十編のうち、「土のう工法」に関する一部を紹介。

「現代版土のう工法としてのD・BOX工法と その「一石”多”鳥」効果 <上><下>」
(財)建設物価調査会発行の季刊 土木コスト情報(2011年1月号、4月号)記事より

「現代版土のう工法としてのD・BOX工法と その局所圧密効果および振動低減効果」
ジオシンセティックス論文集投稿 2010年12月4日

「超軟弱地盤(沼地)対策のための高規格連結土のう工法 - 国道125号線(埼玉県)道路工事」
基礎工 Vol.36,No.4 2008年4月号,pp.71〜75
受賞
| 1974年 | 地盤工学会奨励賞 |
| 1986年 | 地盤工学会論文賞 |
| 1999年 | 地盤工学会功労賞 |
| 2003年 | 土木学会技術開発賞(原位置せん断試験法) |
| 2004年 | 土木学会技術開発賞(高規格土のう工法「ソイルバッグ工法」) |
社会的活動
| 1973年 | 地盤工学会 関西支部幹事 |
| 1976年 | 地盤工学会 中部支部幹事 |
| 1980年 | 地盤工学会 論文報告編集委員会委員 |
| 1986年 | 土木学会 中部支部幹事 |
| 1990年 | 地盤工学会 理事 |
| 1992年 | 地盤工学会 中部副支部長 |
| 1994年 | 地盤工学会 中部支部長 |
| 1996年 | 土木学会 中部支部商議員 |
| 2004年 | 土木学会 表彰委員 |
関連記事
「D・Box工法の設計・施工の基礎」についてはこちらをご覧ください。
「現代版土のう「D・Box」の概要や種類」についてはこちらをご参照ください。









