私は、現在満83歳になりました。
80歳を超えてから、死んでもおかしくないような2度の大きな手術を脳と心臓に受けましたが、幸運にも今もそれなりに活動できていることを心より感謝しています。
京都大学や名古屋工業大学の恩師、同僚、学生の方々に
まず、京都大学や名古屋工業大学の恩師、同僚、学生の方々に心より感謝します。
研究の場を与えていただき多くの学問的な刺激をいただきました。
その結果、物事の本質(現象の根源)に目を向けるべきことを学び、アルミ棒積層体などの実験を通して、土粒子1個1個がどのように動くかなど徹底した基礎研究に打ち込みました。
学生の皆さんとは、様々な実験をしてはその意味について徹底的なデイスカッションを毎晩終電に乗り遅れそうになるまで続けました(乗り遅れたことも多々ありました)。
今でいうと、パワハラに近い迫力で寝るのを忘れるほどのものでした。
よく耐えて付き合って下さったと感謝しています。「研究とは何ぞや」ということを自らも考え、実践してきたと思います。
砂のようなバラバラな粒状体(粒子の細かい土も同じ)の最も有効な補強法は、袋のようなもので区画し拘束することであることを、アルミ棒積層体のモデル実験などを通して見出して、世の中には昔から「土のう」というものあることに気付きました。
「土のう」を見て、これは面白い研究対象であると考える研究者は誰もおられないと思います。
山口啓三郎氏と筒井良幸氏へ
この「土のう」を用いた工法を現場で実証していく過程で多くの仲間のご援助をいただきました。
特に、現在も交友がある山口啓三郎氏(工学博士、一級建築士)には関東地方を中心に北海道から九州まで 日本全国の現場を共に渡り歩かせていただきました。
また筒井良幸氏には東海地方の様々な現場で共に働かせていただきました。
具体的には、田んぼや元・沼地のような軟弱地盤上の建物基礎や擁壁に多く用いられました。
楽しい充実した時を共に過ごさせていただいたことは忘れ得ない懐かしい思い出です。
山本春行広島大学名誉教授へ
山本春行広島大学名誉教授(工学博士)は、海外留学できる貴重な機会を用いて名古屋工業大学の私の研究室へ内地留学して下さいました。
共同研究者として学生の指導もお願いしました。
特に、「D・Box工法の設計・施工の基礎」の執筆に当たっては、共著者として解析計算や難しい室内実証実験を行って下さいました。
本著の付録の部分は、そのほとんどが山本先生によるものです。
ソイルバッグ研究会にも、毎回ご出席いただきお話もいただきました。
長年にわたりお付き合いいただいたことを心より感謝いたします。
野本 太氏(メトリー技術研究所(株)代表取締役)に
野本 太氏(メトリー技術研究所(株)代表取締役)が、初めて私の研究室を訪問されたのは2005年ごろだったと思います。
私は建設会社の社長さんがわざわざ来てくださったのだから、何かお仕事に役立ちそうなものをお見せしようと思って、1Fの実験室まで降りて行って「土のう」について説明したのを覚えています。
その後、埼玉県加須市の沼地上の道路工事を受注されたのをきっかけに共同研究が始まりました。
今後の野本さんの成長のためには土質力学の知識を持たれなくてはと考えて、パシフィックコンサルタンツ(株)中部支社の部屋をお借りした研究会への参加をお誘いしました。
その後、多くの現場へ一緒に出かけて行って楽しい有意義な議論をしました。
印象深かったのは、「こんな大型土のうを作れませんか」とお話ししたところ、一発で現在のD・Box-LSを設計製作されたことです。
ご本人には何度か話しましたが、通常は何度か試作を繰り返して完成品にたどり着くものです。
現場の粘土の塊をタオルに包んで絞った時の水の出方から圧密の速さ(透水の速さ)を推測するという現場の感性(エンジニアリング・センス)にも非凡なものを感じました。
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最近の野本さんとの話の中で、「良いものが、実際に使われるわけではない」という話題がありました。
人間社会では複雑なしがらみや無知の中で物事が決まります。
ですから、より安価(費用対効果が高いことも含む)で、様々な対策効果があり、工期が短く、自然に優しい工法であっても、採用されるとは限りません。
むしろ、これまで多く用いられてきた従来工法の方が、何となく安心感(責任逃れができることも含む)があって、より高価で、対策効果が乏しく(時には逆効果になるることもある)、より工期が長く、自然に優しくなくても用いられることになるということです。
発注権者がしっかり学び、学術的・技術的・経済的・社会的な観点から比較考量して、純粋により良い工法が採用される社会になることを切に願う次第です。
最後に
最後に、60年近い歳月を共に過ごし、自分勝手で好きなことをしてきた私を、最後まで辛抱強く支えてくれた妻に心からの感謝の気持ちを伝えます。
「本当にありがとう!」

