2015年6月8日放送のNHK「ほっとイブニング」で紹介され、大きな注目を集めた画期的な地盤改良技術をご存知でしょうか?
通常、「土のう」といえば大雨の際の浸水対策を思い浮かべる方が多いはずですが、今、その常識が覆されようとしています。

名古屋工業大学の松岡元名誉教授らが開発した新型土のう「D・Box」*(ソイルバッグ)は、なんと「地盤そのものを強化する」という驚きの特性を持っています。*メトリー技術研究所(株)登録商標
本記事では、地震大国日本において切実な課題である軟弱地盤・液状化対策の「救世主」とも目される、この新技術の全貌に迫ります。

軟弱地盤・液状化への「新たな一手」
地震大国である日本において、軟弱地盤や液状化対策は切実な課題です。
従来の工法では膨大な時間とコスト、そして環境負荷が懸念されてきましたが、この「D・Box」はそれらすべての問題を解決する可能性を秘めています。
今回の記事では、番組で放映された内容をもとに、以下のポイントを分かりやすく解説します。
- 「摩擦」の力:トイレットペーパーでも強度が上がる!?驚きの原理
- 圧倒的な効率:工期を2年も短縮した滋賀県彦根市の事例
- 液状化に強い理由:水を通すことで水圧を受け止める独自の構造
- 世界へ広がる技術:インドネシアの沼地でも大型トラックを走らせた実力
「土の良さを最大限に引き出し、自然環境を守りながら地盤を強くする」——そんな魔法のような技術の全貌を、ぜひチェックしてください。
「摩擦」の力で地盤を固める驚きの原理
「D・Box」の最大の秘密は、袋の中に詰められた土や小石が生み出す「摩擦」にあります。
番組内では、松岡名誉教授がストローとトイレットペーパーを用いた非常にわかりやすい実験でその仕組みを解説しました。
「D・Box」の最大の秘密 「摩擦」の力
名古屋工業大学松岡元名誉教授は、土のうの特性について研究を続け、埼玉県の建設会社と共に新型土のうを開発してきました。


ストローは、土のうの中に入っている粒子のモデルを表しています。
ストローの山は、上から抑えると簡単に崩れます。

ところが、薄い紙(トイレットペーパー)で包むだけで、強度が一気に増します。

上から乗ってもビクともしません。


小石や砂など粒子状のものを包むことで、上からの力は粒子同士がぶつかり合う力となります。

これが「摩擦」となり、重い力がかかればその摩擦も増すことから、土のうの強度が高まるということです。

- 粒子のモデル化:
- バラバラのストローの山は、上から押さえると簡単に崩れてしまいます。
- 包むことで強度向上:
- しかし、薄い紙(トイレットペーパー)で包むだけで、大人が上に乗ってもビクともしないほどの強度を発揮します。
- 荷重を力に変える:
- 粒子状のものを包み込むことで、上からの力が粒子同士をぶつけ合う力、すなわち「摩擦」へと変換されます。
- 比例する強さ:
- 重い力がかかるほど摩擦も増すため、結果として土のう全体の強度がさらに高まる仕組みです。
土のう(ソイルバッグ、D・Box)自体の強さの原理はこちらの記事をご覧ください。
実例:工期を2年も短縮!滋賀県彦根市の道路建設
この技術の有効性は、すでに実際の建設現場で証明されています。
滋賀県彦根市では、田んぼの真ん中に道路を通す難工事に「D・Box」が採用されました。
従来の工法と比べ工期を2年短縮できるというメリットがありました。
担当者はこのように言っています。
彦根市道路河川課のM主任土のうを使わなかった場合(従来の工法)は盛り土をして、長時間かけてその沈下の問題を解決していく→時間がかかる。
時間をかけずに施工しようと思うと今度は費用面がかかってくるような工法を選択せざるを得ない。
土のうは両方とも解決するような工法だった。
滋賀県彦根市の道路建設工事の現場


ここでは田んぼの真ん中に道路を通しています。現在、土台部分が作られています。
現場や周囲は水分の多い軟弱地盤です。


ここに並べられているのが、道路や建物の土台用として開発された新型の土のう「D・Box」です。




中には土や小石が詰められています。
袋の材質は酸やアルカリにも強く、土の中では半永久的に利用できると言います。


このような軟弱地盤に、この新型の土のう「D・Box」が驚くべき力を発揮します。
- 課題:
- 現場は水分を多く含む極めて軟弱な地盤でした。
- 従来の工法:
- 通常は「盛り土」を行い、長い時間をかけて地盤を沈下・安定させる必要があり、多大な時間(工期)や多額の費用が課題となっていました。
- D・Boxの導入結果:
- 従来の工法と比較して、工期を2年も短縮できることが分かり、彦根市はこの新型土のうの採用を決定しました。
池の上に道路(国道)と駐車場を建設したこちらの事例もご覧ください。


液状化対策に強い!コンクリートとの決定的な違い
「D・Box」は、地震時の液状化対策においても非常に優れた効果を発揮します。
群馬大学との共同実験では、その性能が浮き彫りになりました。
群馬大学と行った、土のうとコンクリートの比較実験
この新型の土のう、液状化地盤でその特性がより発揮されることが分かりました。
液状化した地盤の上に、同じ重さのコンクリートと土のうを乗せて揺らします。


すると、コンクリートが先に沈みました。






土のうは水を通すことでその水圧を受け止め、留まることができました。
通常はセメントを入れます。
そうすると固くはなりますが、水は通さないので、その下はズクズクのままです。






水をいかに抜くかというのがポイントなので、土のうを入れればその辺が本当見事におさまります。


土のうは真下の地盤も強くする


軟弱地盤に土のうを置くことで、真下の地盤も強くする効果もあります。
軟弱地盤に土のうを置くと、スポンジのような役割をして水を吸い取ります。






その結果、土のうの真下の地盤の水分が減り、強度が増します。


まとめ:液状化地盤における、土のうとコンクリートの違い
- 実験結果:
- 液状化した地盤の上に同重量のコンクリートと土のうを置き、振動を与えたところ、コンクリートが沈み込む一方で、土のうはその場に留まり続けました。
- 排水性能が鍵:
- 通常のセメント工法では水を通さないため、地盤下部が不安定なままになります。
- 一方、「D・Box」は水を通すことで水圧を抜き、地盤を局所的に圧密させて強くし、安定させることが可能です。
- スポンジ効果:
- 軟弱地盤に置かれた「D・Box」はスポンジのように水を吸い上げ、上で述べたように真下の地盤の水分を減らすことで地盤そのものの強度を高める効果があります。
「土のう工法」と「セメント改良」の違いはこちらの記事をご覧ください。


低コスト・環境保護・そして世界へ
この技術は、高い性能だけでなく「環境への優しさ」と「経済性」も兼ね備えています。
「D・Box」工法による施工費用
新型の土のうを使った工法でかかる費用は、1平方メートルあたり8,000円程度です。
この工法への理解が進めば単価も下がり、さらに普及が進むのではと期待しています。
自然環境を守る「D・Box」工法
地震大国日本では、液状化地盤への対策は不可欠です。
一般的には、セメントで固めたり、杭を打つ工法をすぐ思いつくと思います。
しかし、「D・Box」工法を使えば、土の持ってる良さを最大限に引き出して、自然の中に道路を作ることができます。
自然の環境を守り、自然と共存できるできる唯一無二の工法です。
日本全体、できれば世界中に普及することを願っています。


国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)にも登録


この新型の土のうは、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)にも登録されています。
地下水が吹き出した現場など、難しい工事にも採用実績があります。


この新型の土のう「D・Box」を使った工法は、公共工事などのおよそ300箇所で採用されています。
海外でも使用される「D・Box」
インドネシア・カリマンタン島では、沼の真ん中に道路を建設し、大型のトラックも通れるようになりました。




まとめ:「D・Box」工法使用のメリット
- 施工費用:
- 1平方メートルあたり8,000円程度とされており、普及が進めばさらなるコストダウンも期待されています。
- 環境負荷の低減:
- セメントによる固化や杭打ちを行わず、土の良さを引き出して地盤を強くするため、自然環境を守る工法として注目されています。
- 信頼の実績:
- 国土交通省のNETIS(新技術情報提供システム)にも登録され、国内約300箇所の公共工事で採用されています。
- 海外展開:
- インドネシアの沼地での道路建設など、世界各国の難工事現場からも注文が相次いでいます。
まとめ:土の力を最大限に引き出す未来の工法
「D・Box」は、セメントや杭に頼ることなく、自然界に存在する「土」と「物理法則」を巧みに利用した、日本発の革命的な技術です。
松岡名誉教授が語るように、この「自然環境を守りながら地盤を強くする工法」は、地震大国である日本のみならず、世界中の地盤課題を解決する可能性を秘めています。
「何でもセメントで固めるのではなく、土の持っている良さを最大限に引き出す、この自然環境を守る工法を、ぜひ世界で使っていただきたい。」
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Youtubeには他の動画もございます。こちらよりご覧いただけます。
「土のう工法 vs セメント改良|一石五鳥の効果を持つ「土のう工法」のメリットを徹底解説!」はこちらをご覧ください。


「D・Box工法の設計・施工の基礎」についてはこちらをご覧ください。
「「土を育てる」工法(D・Box工法)とは?」はこちらをご覧ください。
「現代版土のう「D・Box」の概要や種類」についてはこちらをご参照ください。





